障害者への不妊処置に対する声明文

2022年12月28日

障害者への不妊処置に対する声明

 

全国権利擁護支援ネットワーク

代表 佐藤彰一

 

私たち 全国権利擁護支援ネットワークは、地域社会で誰もが自分らしく安心して生活できるように日夜、権利擁護支援の活動に励んでいる団体の集まりです。2009年に22団体で発足しましたが、今や正会員団体で150を超えるネットワークになっています。

北海道の社会福祉法人「あすなろ福祉会」がグループホームの利用者同士の結婚を認めるに当たって、不妊処置(男性にはパイプカット、女性には避妊リング)を強要していたことが明るみにでています。法人側は、子どもの世話までは対応できないと発言していますが、地域を挙げて支援する工夫をどうしてできないのでしょうか。そうした支援をしている福祉関係者も実際に存在しております。

障害のある方が子どもを産んではいけない、育てることができないとの前提でこの法人の理事長は発言をされていますが、この点は、明らかに問題です。障害があることで子どもを産み、育てる権利を行使する際に支援が必要なのであれば、それを行うのが福祉であるところ、そもそも権利行使を制限していることが大問題です。

また、意思決定支援の点でも、本人が判断するために必要な情報や環境を整えなければ、適切な意思決定が行われたとは言えないはずです。サービス提供の拒否と不妊処置を天秤にかけて同意を求める行為は、明らかに誘導的で真意に基づく意思決定がされたとは言えません。障害者総合支援法の趣旨にも違反する行為です。施設側は「強要ではない」と主張しているようですが、ほかに選択肢のないなかで、利用を拒否すると脅して同意を取り付けていることは卑劣としか言いようのない強要行為です。

障害の有無にかかわらず子育て支援は社会的に行うものです。そんな支援を考えないで、障害者にパイプカットを強要することは障害者に対する偏見であり差別です。法人側は利用者に謝罪の上、産めなくなった体にしてしまったことについて賠償をすべきでしょう。

今現在、全国各地でかつての優生保護法による強制不妊手術の訴訟がおきています。

政府も強制不妊手術が間違いだったことを認めています。そのような時期に、社会福祉法人が何年にもわたって不妊処理を強要していたことには、驚きを禁じ得ません。

私たちは権利擁護支援を展開する活動をしている団体です。このような社会福祉法人の存在は容認できません。と同時に、このような考え方が福祉に携わる方々の中に存在しているとすれば、それは是正すべきだと考えます。

北海道庁、あすなろ福祉会を所管する自治体、ならびに厚生労働省は、このような事態がなくなるような適切な行政対応を行われるよう要望いたします。

障害者も障害のない人と同じく、「子どもを産む権利」「家庭を作る権利」があるのだと強く社会に訴えたいと思います。