『全国権利擁護支援実践研修会 inながの』 【報告】 

2016年8月19日(金)、長野市立柳原公民館を会場にして「全国権利擁護支援実践研修会inながの」が開催されました。

全国権利擁護支援ネットワークから長野での開催についてご提案いただき、現地事務局であるNPO法人北信ふくしMねっと、アドボネットながのの会員と共に、長野に相応しいテーマや内容は何か、と検討や協議を重ね、副題に「どうする?!長野の意思決定支援~権利擁護の本質を考える~」として研修会の開催に至りました。

当日は、長野県内外から89名の行政・福祉・司法等の関係者に加えて、育成会会員など多様な方々にご参加をいただきました。

午前中は、「権利擁護支援と意思決定支援」と題し、全国権利擁護支援ネットワークの佐藤彰一代表から基調講演をいただき、続いて課題提起として「権利擁護の現場で起きていること~地域の実践から~」をテーマに、成年後見支援センターかけはし(松本市社会福祉協議会)の鳥羽弘幸さん、北信圏域権利擁護センターの永池幹さん、知多地域成年後見センターの今井友乃さんの3名から

○現場での具体的な取組や事例報告

○意思決定支援をしていくうえで感じている課題

○実践者として伝えたいこと

の3点を中心に発表いただきました。

鳥羽弘幸さんからは、「本人と向き合い最善の利益を模索~欲求をどこまで意思として支援するか悩みながら~」として、際限のない欲求をどこまで意思として支援できるのか、意思決定の対応と体制的な限界、約束を守ることと支配的になってしまうことの線引きの難しさ、について現場の思いを発表していただきました。

永池幹さんからは、「誰もが人生の主体者として地域で共に暮らすために~本人置き去りの支援になっていないか、自問自答しながら~」として、支援に入ると本人が蚊帳の外に置かれている現状から、本人がどのような暮らしを望んでいるのかイメージを加えながら意思決定支援していくことの必要性について発表いただきました。

今井友乃さんからは、「本人不在の支援はしない~一緒に振り回されることを覚悟する~」として、支援の中で本人の選択したことが本人の本心であるか悩ましい事例を通じての課題について発表いただきました。

午後は、NPO法人ふくし@JMI理事長、宮城福祉オンブズネット「エール」副理事長である小湊純一さんを講師に、「権利擁護の本質~意思決定支援を実践するには~」として、次の3つのケースについてグループワークを通じて学びを深めました。

○本人の意思を尊重すると介護負担が増加してしまうケース

○本人の意思を尊重すると混乱・不調になってしまうケース

○本人の意思ではなく家族の意思で支援が決定していくケース

 

参加者アンケートから次のような声が聴かれました。

◆基調講演

・「困難」なのは誰なのか、常に心していきたい。

・業務多忙で時間に追われる日常のなか、意思決定を知らず知らずのうちに強要しているのではないか、振り返り反省すべき点です。決めることは大変なこと、時間がかかることです。ゆっくり時間がかかっても利用者さんと一緒に悩んでいこうと思います。

・自己決定と最善の利益、どっちを重視するか、いつも悩んで苦しかったけど、「悩むことが当たり前で、どちらも大事にしているから悩むんだ」という言葉で、勇気づけられました。

・「社会の中で生きる」ことの大切さがわかりました。

・改めて、意思決定とは何なのか?と考えさせられました。”普通の感覚”を持って、今後も支援を続けていきたいです。

 

◆課題提起

・一緒に経験する、共有することの大切さを学びました。

・支援がうまくいかなくても、検証して、また支援をしていくことが大切だと思いました。

・支援者主体でなく、流動的な本人の状況にあわせて支援していきたいです。

・「支援者が都合よい支援はしない」ということ。事業者の都合、職員の都合と言い訳していることもあるか・・・

・「悩みながらやっている」「異業種連携」「権利擁護=成年後見ではない」「振り回されることを覚悟する」「失敗をおそれない」「成年後見=1つのツールにすぎない」・・・お3人の言葉がどれも重みがあり、大切にしたいと感じました。

 

◆グループワーク

・自分だったらどうしてほしいかと考えてしまうが、本人がどうしてほしいかということを考えながら支援を考えていかなければと感じた。

・自分の専門領域で対応できること、できないことをしっかり認識し、足りない部分は他の専門職の協力(チームで)を得ることが重要だと再認識した。

・事例を通し、専門性を追求することの大切さを学ぶ機会となった。「専門性と関係性の先に意思決定がある」肩を張らずに一緒にあたり前の暮らしの実現を目指したいと思います。

・専門職として知っておかなければならない知識、視点、アセスメント、それに基づいた支援について考えることが大事だと思いました。それは支援者の価値ではなく本人の思いを中心に考えることだと感じました。

・グループワークをとおして、意思決定支援の前提に、本人を理解することや支援者の専門性を活かすことの大切さがわかりました。

 

参加者の職種、業務、参加目的はそれぞれ異なりますが、参加者の皆さんからも高い評価をいただくことが出来ました。密度の濃い「意思決定支援」の研修になったと思います。これからの長野の意思決定支援が少しずつ変わっていきそうな予感がします。

本研修を通じて、自分達の日頃の業務を立ち止まって考え確認すること、色々な視点を取り入れること、それを真摯に受け止めて次につなげていくことの重要性を改めて感じました。

本研修会の開催にあたり、ご参加いただいた皆様をはじめ、御後援をいただきました行政機関、福祉関係機関や関係団体に感謝を申し上げます。

そして、全国権利擁護支援ネットワークの力で「長野の意思決定支援」そしいて「権利擁護の本質を考える」機会を得られましたことに改めて御礼いたします。

ありがとうございました。

アドボネットながの

NPO法人北信ふくしMねっと

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