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第9回 全国権利擁護支援ネットワーク全国フォーラム報告

 

2018年2月10日(土)、11(日)の二日間にわたり、東京都大田区産業プラザPIOにて全国フォーラムが開催されました。

1日目は、まず須田俊孝さん、西岡慶記さん、佐藤彰一さんによる鼎談「成年後見制度の利用促進に向けて」が行われました。須田さんから、成年後見制度利用促進基本計画について国が目指していることについてお話しいただきました。国が目指していることは、判断能力が十分でない方々の権利擁護支援が促進されることであり、成年後見制度利用はそのための選択肢・手段である。権利擁護支援の促進にむけ、意思決定支援や身上保護も重視した適切な後見人の選任及び交代ができる体制づくり、本人の実際の状態が反映されるような診断書の在り方の検討、地域連携ネットワークづくり、欠格条項の見直しに力を入れていきたい。また、地域連携ネットワークの中核機関においては、権利擁護支援のコーディネーターや司令塔といった役割を期待しているとのことでした。

西岡さんからは、成年後見制度の現状と課題について、成年後見制度利用促進基本計画と絡めてお話しいただきました。年々成年後見制度を利用される方が増えている中、専門職(弁護士・司法書士・社会福祉士等)が選任される割合が全体の60%を超えている。認知症高齢者がどんどん増えていく状況の中、専門職だけで後見人が足りるのかということ、認知症高齢者に限らず成年後見制度を利用している本人にとって最もふさわしい後見人等が選任されているのか懸念がある。本人を支える後見人を選任していくために、専門職や地域連携ネットワークの中核機関などと情報を共有していくことが重要と考えているとのことでした。

佐藤さんからは、①成年後見制度で意思決定支援が本当にできるのだろうか、②地域連携ネットワークは新たにつくらないといけないのかという質問が投げかけられました。①に対して西岡さんは、現状では禁治産・準禁治産制度の考え方(家のために財産を保全する)が抜け切れず、財産保護を重視してしまっている側面がある。けれど、これからは本人の財産を本人のQOL向上のために使うことについては尊重し、一方で、「本人のために」という名の後見人等からの搾取には介入していくことが必要である。そのためにも、家庭裁判所と中核機関との連携は重要であるとのことでした。

②に対して須田さんは、地域にあるものをまずは活用し、不足していることがあれば、少しずつ補ってネットワークを育てていってほしいと話されていました。

成年後見制度の利用促進は、単に制度利用をする人を増やせばよいというものではなく、判断力が十分でない方の権利擁護支援を促進していくことが重要であり、そのためにもネットワークを強化して補っていこうということが共有されました。

 

次に、岡本一美さん、後藤真一郎さん、谷本恵子さんによるパネルディスカッション「地域連携ネットワークの創設・運営の在り方」が開催されました。コーディネーターは平野隆之さん、コメンテーターは竹内俊一さんが務めました。岡本さんからは、愛知県知多地域の地域包括ケアの取り組みについて発表がありました。「困ったときはお互いさま」を合言葉に、多世代掛け合わせで交流を進め、課題解決とまちづくりが行われてきた事例について発表がありました。人は誰でも「役に立ちたい」という気持ちを持っている。それをどう引き立て、コーディネートしていくかがとても重要であると話されていました。

後藤さんからは、「我が事・丸ごと」地域共生社会の実現に向けた、国での議論について発表がありました。社会的孤立に介入し、誰もがSOSを言ってよい土壌をつくること、そして、断ったりたらいまわしにしない相談機関を充実させ、住民一人一人が地域の一員だという感じることができる社会づくりを目標にしている。現在85自治体でモデル事業が行われているが、そのありように地域差がある。とにかくその地域にあった形ですすめてもらいたいとのことでした。

谷本さんからは、岡山県瀬戸内市に権利擁護センターを設置した経緯とその効果についてお話しがありました。認知症のため、自宅が分からなくなり地域の方に保護をされた高齢者との出会いと支援をきっかけに、権利擁護支援システムの構築の必要性を共有することができた。虐待の現状を数字だけではなく、事例で伝え理解を求めることや、自治体の責務であることを訴えて、関係者の気持ちを動かしていく努力をすることも大切であることが報告されました。

 

2日目は田邊寿さんコーディネートによるパネルディスカッション「生活困窮者と日常生活自立支援事業の活用」が開催されました。パネリストは、菊地英人さん、山口浩次さん、平野隆之さんの3名でした。

菊池さんからは、生活困窮者自立支援制度の理念及び概要等について説明がありました。この制度の根拠法である生活困窮者自立支援法は23条しかなく、生活困窮者が「制度の狭間」に陥らないようにするために、必要最低限のことだけを法律で定め、各自治体に裁量を付与しているとのことでした

山口さんからは、滋賀県大津市社会福祉協議会での活動を中心に広がりをみせた権利擁護の仕組みづくりのプロセスと苦悩、また、工夫してきたことについて報告がありました。「困ったときは、大津市社協へ」をキャッチフレーズに、相談を重視した問題を受け止める風土を作ってこられたそうです。①「聴く」が「効く」・・正論は役に立たないことの理解、②「困ったときはまあええか」・・相談員はスーパーマンではない、③「みんなぼちぼちいこか」・・みんなで肩の荷を分かち合おうという「愛ことば」に心を打たれました。

平野さんからは、滋賀県内の3市(大津市、高島市、東近江市)の総合相談体制の比較研究結果について報告がありました。そのなかで、生活困窮状態に陥っている人は混乱状態にあり、何に困っているかを第三者に伝えることができない状態にある。そのため、本人の状態像を理解すること(前さばき)にかなりの時間を要する。日常生活自立支援事業(地域福祉権利擁護事業)従事者の前さばき力が生活困窮者自立支援事業の相談負担軽減にも寄与するのではないかというお話がありました。

 

そして、最後にAOY(アドボカシー・オブ・ザ・イヤー)の授賞式が行われました。本年受賞されたのは、福岡県北九州市にあるNPO法人抱樸さんでした。授賞式には理事長の奥田知志さんが出席され、コメントをいただきました。

「抱樸」の由来にふれながら、問題を抱えていても生きていける社会、皆の幸せについて考えることのできる社会づくりを目指したいとお話がありました。奥田さんが大切にされている伴走支援は、とにかく人であることを大切にします。そして、どんな状態であっても断らずに出向いていくことを大切にします。「あなたを見捨てていない」というかたちで寄り添う。決して、本人が失敗しないように支援者がガードレールとなって守るのではなく、たとえ本人が失敗したとしても死なないように寄り添い続ける。そんな姿勢が重要なのだという言葉はとても重く、心に響きました。

 

成年後見制度の利用促進、生活困窮者自立支援制度、「我が事・丸ごと」の地域共生社会、地域連携ネットワーク、地域包括ケア等、いろいろな切り口で報各々の幸せを追求していくことが何よりも重要で、その目的を達成するためのプロセスやネットワークは、各地域よって異なってよいし、異なって当たり前であるということを再認識しました。

今回、韓国からも何名か出席されていました。今年の10月23日から25日に、ソウルドラゴンシティにて第5回世界成年後見大会が開催されるようです。各国から参加できるよう、日本語の同時通訳も準備してくださっています。日本国内の動きもさることながら、海外にも目を向けて権利擁護支援の輪を広げていきたいですね。

 

次回の第10回全国権利擁護支援ネットワーク全国フォーラムは福岡県での開催です。こちらも多くの会員の皆様に出席いただけることをのぞみます。(事務局)