2月8日(水)大垣市「成年後見制度利用促進法における中核機関の役割と実務研修」『報告』
AS-J
「成年後見利用促進法における中核機関の役割と実務研修」開催報告書
1.日 時 令和5年2月8日(水) 13:30~17:00
2.会 場 ソフトピアジャパンセンター(センタービル1階 セミナーホール)
3.参加者数 65人(市内20人、市外26人、県外2人)
4.プログラム
(1)講演
『権利擁護支援の基本と意思決定支援』
講師:山口 正之 さん (萩・長門成年後見センター 代表理事/
(全国権利擁護支援ネットワーク副代表/弁護士)
(2)パネルディスカッション
『権利擁護支援地域連携ネットワーク機能を強化するための取り組みについて』
コーディネーター:山口 正之 さん
:岡川 毅志 さん(ぎふ権利擁護センター 代表理事)
パネリスト:山科 正太郎さん(関あさくら法律事務所・弁護士)
栗山 昌治さん(栗山昌治司法書士事務所・司法書士)
山田 隆司さん(東濃後見センター 事務局長・社会福祉士)
柳 葉子さん(あゆみの家相談支援事業所ゆう 相談支援専門員)
水谷 和智さん(安八郡輪之内町役場 福祉課)
飯干 武人さん(揖斐郡池田町役場 保健年金課)
5.報 告
前日に大垣市では成年後見制度に関するケアマネジャー研修があり、若干、市内からの参加が
少なかったが、100名の定員に対し65名の参加者数となった。
コロナ禍でオンライン形式での研修が主となっているなか対面形式で開催でき、講師の方々
の表情や声音がリアルに伝わり参加者の理解もより深まったようである。
山口正之さんの講演では、成年後見制度利用促進にあたっては地域共生社会の実現という
目的に向け、本人を中心とした支援・活動の共通基盤となる考え方として「権利擁護支援」を位
置付けた上で、権利擁護の地域連携ネットワークの一層の充実などの成年後見制度利用促進の
取組をさらに進めることであり、「権利擁護支援」は支援を必要とする人が、地域社会へ参加し
共に自立した生活を送るという目的を実現するための支援活動である。また、「意思決定支援」
は権利擁護の中心にあり、能力存在推定のもと本人が意思決定の主体であることを念頭にして、
チームで支援(チームで情報共有し、共同して考える)しなければならない。注意しなければ
ならないのは支援者の価値観や考え方と本人の気持ちが混ざること、本人が決めたことだから
と自己責任としてしまうことである。そうせざるを得ない背景を考えた上で本人の意思(思い・
真意)を吟味しなければならない。一方向ではなく相互支援の関係性でもって互いに学び合い
変化すること、地域での支援者を増やしていくことで尊厳のある本人らしい生活を継続するこ
とができる社会の実現につながるとのお話があった。
パネルディスカッションでは、法律職・福祉職・行政それぞれの立場からどのような取組をしているか、中核機関の果たす役割は何かについて積極的に意見交換が行われた。
お互いに連携するにあたって法律職に対しては敷居が高く感じることや混乱していることを困難事例としてとらえてしまい却って話を難しくしていること、行政としてどこまで個々の事例に関わっていけるのかなどの意見があった。それに対して山科弁護士、栗山司法書士からは、遠慮せず相談にきてほしいこと、自分達ももっと関係を深めていきたいと思っているとお話があった。
その様子から、研修後のアンケートでは「これからは気軽に相談できる」との感想がみられた。お互いに顔が見える関係であること、それぞれの専門性を活かしてお互いに尊重し合いながら、支援を必要とする人の最善の利益に向けてチームで支えていくことが権利擁護支援においては重要であると再認識された。
会場からは身元保証に関する質問があり、身元保証人がいなくても入院や入所はできるとの
見地があっても、実際には病院や施設からは身元保証人を立てることが要求され、対応に苦慮しているとのことであった。現状としては病院や施設にも理由があり、互いに理解を深めていく
ことが今後の課題となっている。
成年後見制度は権利擁護支援の重要な手段の一つであり、同時に本人を中心とした意思形成、意思決定ができるようネットワーク(つながり)を作っていくことが大切であり、支援者に求められていることであると、本研修を通じて共通理解となったと思われ、今後の各機関での活動に生かされていくことを期待したい。
作成者:ぎふ権利擁護センター西濃支部 安田あや