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強制不妊手術事件最高裁大法廷判決

;強制不妊手術事件最高裁大法廷判決
7月3日水曜日に最高裁が強制不妊手術の大法廷判決を出しました。関係者の予想を超える踏み込んだ内容で、おそらく歴史に残る判決になるでしょう。憲法や民法の教科書が変わると思います。国による人権侵害事例については、除斥期間徒過の主張(もう訴えることができないよという主張)を許さないということになるのでしょう。

判決は5件ありますが、まあとりあえず下記をご覧ください。
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=93162
東京訴訟の判決です。

1 優生保護法中のいわゆる優生規定(同法3条1項1号から3号まで、10条及び13条2項)は、憲法13条及び14条1項に違反する
2 上記優生規定に係る国会議員の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受ける
3 不法行為によって発生した損害賠償請求権が民法(平成29年法律第44号による改正前のもの)724条後段の除斥期間の経過により消滅したものとすることが著しく正義・公平の理念に反し、到底容認することができない場合には、裁判所は、除斥期間の主張が信義則に反し又は権利の濫用として許されないと判断することができる
4 同条後段の除斥期間の主張をすることが信義則に反し権利の濫用として許されないとされた事例

いずれも当初の関係者の予想を上回る判決です。とくに3ですね。もう少し制限をかけるのではないかという予想があったのですが(過去の判例)、クリアーに正義に反すると断じました。

いささかマニアックな話になりますが、原告側が高裁で勝訴している4件についてはこれで確定です。高裁で敗訴している仙台高裁の事件については「破棄・差し戻し」ということで、仙台高裁でもう一度審理することになりますが、差し戻しをされた仙台高裁では最高裁の法律判断に反する法律解釈をすることができない決まりになっていますので、この基本枠組みで判決を出すことになります。おそらく和解になるのではないでしょうか。全国各地で展開されている同種訴訟も和解に向けて動き出すでしょう。

それにしても判決後に首相が、原告当事者にお会いして謝罪したいといいだしているようですが、「遅きにすぎる」というべきでしょう。もっと早くから直接あって謝罪すべきだったのです。そうすればここまでこじれることもなかった。政治資金パーティの裏金操作をきちんと処理できない政党らしい対応です。言われたら対応するということで、自浄能力がないのですよ。

;岸田首相、強制不妊原告に謝罪へ 月内面会、補償も検討
https://www.jiji.com/jc/article?k=2024070300836&g=pol

補足ですが、たとえ本人の同意があったとしてもこうした手術をしてはいけないのだと断言したのはすごいですよ。同意書があればいいだろう、家族がうんと言えばいいだろうという現場の扱いはいまでもありますが、きっぱり否定したわけです。